赤いコーリャン


1987年 中国
監督 チャン・イーモウ 
主演 コン・リー チャン・ウェン

 コーリャンというのは中国北部に産するイネ科の植物、人間がすっぽり隠れるほどに成長する。中国の人々はこのコーリャンでお酒を作る。緑色のきつい草を蒸留すると不思議に真っ赤なコーリャン酒へと変化する。緑色の草が男達の汗と力によって真っ赤なコーリャン酒になるのを見ると何か新鮮な感動を呼び起こす。それは余によって本当の「女」となった主人公の喜びと重ね合わせてしまう。その行為は男も女もごく自然で素朴だ。緑から赤へと単純な変化でお酒が生まれるように[その行為]でほんとうの[愛]が生まれたのだ。そしてその[愛]はとても美しい。

  数年後・ その人々の前に日本軍が現れコーリャン畑を中国人自身の手でつぶされる。たくさんの中国人達がコーリャン畑をつぶしていく場面の彼らの悲痛な顔はコーリャン畑の草達の叫びともいえる。九児の顔も[行為]の後に歌を聞いていた美しい表情ではない。

 今までお酒として使われていたコーリャン畑への侵略。戦争のなんたるかを知らなかった主人公・民衆たちは自分達の生活の糧として使われていたコーリャン畑を潰され、そして仲間がむごく殺されることによって本当の意味の憎しみに気づいた男達。その憎しみはコーリャンの草が真っ赤なお酒に変わる以上に赤く変わりひどく悲しみに満ちている。

 赤く染まり切ったものは元にはなかなかもどらない。九児の死でそれに気づくが、その赤が何もないほんとうの美しい赤に染まり直せるかどうが、ラストの子供の歌を複雑な思いで聞いてしまった。


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